来季のマグロ遠征に向けて、フィリピン・パングラオ島へトレーニング合宿に行きました。
今回の目標は、魚突きシーズンを見据えてロングダイブ(4分以上)へ体を慣らすこと、そして潜水記録を自己ベスト付近まで持っていく、この二つです。
温暖なフィリピンの地で、ほぼ全ての時間を体作りに費やし、起きている時間は常に「今まで届かなかった深場にいるイソマグロのボスを突くためは?」「世界トップのスピアフィッシャーにどうすれば追いつけるか?」という答えのない問いと向き合い続けました。
この合宿は自分にとって、’23年7月から再開した約10ヶ月のトレーニング計画の総まとめという位置付けでした。
陸〜海まで実に充実した時間を過ごすことができました。
疲労コントロールがうまく行かず、二度ほど高熱で寝込んでしまいましたが、最終的にトレーニングは絶好調でした。
最終週に調子の良さを実感し、記録更新に挑んでみたところ、自己記録を大幅に更新する68mまで行くことができ、70mが見えるところまで来ることができました。数字以上にこの結果が持つ意味は大きかったです。
実のところ、ここまでの道のりは決して楽なものではなかったです。
2019年にフリーダイビングを始めてから、たった2ヶ月のトレーニングで50mまで潜れるようになりました。しかし、そこから三年間、1mも記録を伸ばせませんでした。50mを超えると水圧(6気圧)にうまく対処できず、肺や気管支から出血する怪我「肺スクイズ」にたびたび悩まされていました。いつも50mを超えると必ずスクイズが出てしまう。いつしか50という数字がトラウマになっていました。
考えうるあらゆることに取り組んできてダメだったのに、それがこんなあっさり深くいけるなんて。
三年間、多角的に体を鍛え続け、トレーニングを積んできたことが一番大きかったのかな。
68mって人類の記録としては決して特筆すべきものではないですが、自分にとっては行ったことがない「未知の世界」。
ディープダイブに挑む際にトラウマをコントロールし、未知の領域に挑むメンタル面でも大きな収穫がありました。
トレーニング外では、世界中から高い志を持って集まったフリーダイバーたちとの出会いがとても嬉しかったです。
たまたま同じタイミングで、日本から友人の広瀬花子ちゃんが来ていて、花子ちゃん繋がりで台湾人や韓国のフリーダイバーの仲間ができたり。
彼女の人間的な強さを目の当たりにし、とても勉強になりました。
イタリアから来ていたベテランスピアフィッシャーのMarcoさんとは、初対面で「コイツ絶対魚突き師だろ…」とお互い思っていたようで、最高の時間を一緒に過ごすことができました。Marcoはとても情熱的なスピアフィッシャーマンで、道具に対するロジカルでニュートラルな姿勢からは学ぶことがたくさんありました。なんといっても彼はミラノで自分のスピアフィッシング・スクールを経営しています。イタリア沿岸にあるMarcoのとっておきスポットでは、潮当たりがいいと特大のカンパチが回ってくるそう。今後、ヨーロッパスタイルのディープスピアフィッシングもしっかり修行しに行きたいと思っています。
また一つ、潜りに行かなきゃいけない場所が増えました。
いつかMarcoが日本に来たら僕のとっておきの場所に連れて行ってあげたい。
またアラスカからきたスピアフィッシャーは、僕がPolespear(手銛)で大物を狙うフェアな姿勢に影響を受けたらしく、早速帰国後に手銛を購入し、ハリバット(オヒョウ)やコッド(タラ)を突いた写真を送ってくれました。彼に聞いたメキシコ・バハカリフォルニアのスピア・トリップの話も大変興味深く、遠く離れた異国の海に思いを馳せました。
チェジュ島から来た韓国人ダイバーのSewonは同い年で、潜水記録が近かったこともあり、切磋琢磨することができました。
一度、Sewonと街でご飯を食べているときにすごく可愛い女性がいて、それを彼に言ったら「韓国では普通だよ」と言っていたので、こちらもまた行ってみたくなりました。
さて、あと少ししたら今年のマグロが始まります。残りの時間を全力で過ごして、今年のマグロに挑みたいです。